* 「敬老の日」に寄せて 〜コムスン去って「介護難民」〜
「敬老の日」に寄せて 〜コムスン去って「介護難民」〜
 今年も「敬老の日」がやってきた。世の流れが忙しいのか、年のせいなのか、一年がすぐ経ってしまう。
 小泉改革で医療・介護界は、公的に抑制され、深刻な事態が起こっている。流産しそうな妊婦のタライ回し、小児科医の不在、救急体制をとれない病院、地域の中核病院の倒産、等々。このままでは「日本医療の崩壊」間近とまで言われている。
 そういう中で、今年6月、厚生労働省は不正をしたということで、最大手訪問介護コムスンの全国にある1600ヶ所の事業所を指定打ち切り処分にした。その結果、コムスンを利用していた深夜帯の訪問介護サービスが受けられずに、いわゆる「介護難民」となる高齢者が多数でる恐れがあると報道された。
 もともと、コムスンは「いつでも、どこでも、24時間サービス」を前面に打ち出し、「ハローコムスン」のテレビコマーシャルと共に訪問介護事業を一気に全国展開した。勿論、尾道にもやってきた。
 夜間、深夜の訪問介護はつらい。危険防止のため二人体制を組む必要もある。午後6時から午後10時までの夜間の介護報酬は二人体制で5700円。午後10時から午前6時までの深夜の介護報酬は二人体制で6800円である。これではどうやりくりしても、夜間深夜出勤に見合う十分な人件費は出せない。多くの訪問介護事業所は経営に苦しんでいる。夜間深夜訪問介護の負荷は存続の危機となる。従って大半の訪問介護事業所は人手不足も相まって夜間、特に深夜の訪問介護はやっていないはずである。コムスンの夜間深夜訪問介護は市町村にとってありがたかったに違いない。コムスン撤退後、この夜間深夜訪問介護を介護保険制度の保険者である市町村が、どう解決してゆくのか興味深いものがある。
 コムスンは不正をしても、なお今期100億円を越える赤字を抱えたと聞く。「コムスン事件」の裏側には公的抑制による介護報酬の低さ、そのための人材不足などの構造上、政策上の問題が潜んでいる。
 現在、介護職員は100万人あまり。団塊の世代が65歳になる2014年までには、40万人から50万人の増員が必要だといわれている。介護報酬を上げ、待遇改善を急がないと、国民は生存するに必要な介護も受けられなくなる。年金、医療の崩壊も含め、こんな貧困な社会保障を受けるために、われわれは一心不乱に頭髪かき乱して働かされたのだろうかというのが、一団塊世代のボヤきである。
 何はともあれ、コムスンの親会社グッドウィルは、今頃、ほっと胸をなでおろしているだろう。なぜなら、もうビクビクしながら綱渡り的不正行為を強要することもいらないし、(ちなみに不正請求返還分は14億7500万円であった)今後持続するであろう巨額な赤字をもはや計上することもないのだから・・・。                                   

「山陽日日新聞発表の論文を引用」(2007年9月)