* 「敬老の日」に寄せて 〜さらば土建国家〜
敬老の日に寄せて〜さらば土建国家〜
 今年もまた「敬老の日」がやってきた。各地で、増え続ける百歳以上の高齢者が表彰される。まさに長寿大国ニッポン。実にめでたきことである。

 ところで皆様は、平成16年、日本の医療水準、つまり国内総生産(GDP)に対する医療費の割合が、主要先進国(アメリカ、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、日本)の中で最下位になったのをご存知でしょうか。 

 又、9月8日付けの本誌で、尾道市民病院の外来患者が平成14年以降、患者の自己負担増で年々減少しているもののかろうじて黒字計上、全国の公立病院の6割以上が赤字経営との報道があった。そして、最近のニュースで散見するのが、産婦人科医の不足で自分の住む町で子供が生めない、小児科医がいなくて子供の急病に対する緊急体制が組めない、特に夜間は無医村状態になる。医療事故が多発し、全国1200の医療機関で年間18万3千件の「ヒヤリ・ハット」事例があるという。日本の病院のスタッフ数はアメリカの5分の1。日本の医療スタッフは忙殺されているのである。

 世界保健機関(WHO)が日本の保険医療は世界一と賞賛していたのに、どうしてこんなことになったのだろう。一部マスコミは、聖域なき改革のもとに医療費抑制をし、医療に効率と経済性を求めた結果だという。しかも医療保険に4000万人も入っていない医療貧困国アメリカの真似をして、混合診療、株式会社の医療参入、それに伴う民間医療保険への加入等で医療に市場原理が導入されると、金持ちしかまともな医療を受けられなくなり、日本人の健康は虫食まれ、いつしか「長寿大国ニッポン」どころか「医療離民」であふれるに違いない。

 人口が高齢化すれば疾病の量は増える。それが自然の理である。当然、医療費は増大していく。そういう原理原則を無視して、医療抑制政策や介護費用抑制策を続けることを国民は望んでいるのだろうか。

すべての国民は大病しても、がんに侵されても、障害者になっても安心しておれる良い医療と良い介護を望んでいるはずである。ならば、そういう国、システムを作るのが政治の役割であろう。すべての国民が望むものに、より多くの税金を使うべきである。

すべての国民が望むもの、それは弱者になったときの手厚い社会保障でる。人は皆、老い、衰え、弱者になっていく。

そろそろ土建国家(=利権国家)からオサラバしよう。                                        

「山陽日日新聞発表の論文を引用」(2006年9月)